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光クラブ事件

それは昭和23年に起こった。東大を主席で卒業した山崎という青年が卒業と同時に金融業(光クラブ)を始めた。手持金1万5千円全てをつぎ込み新聞広告を行った。「日本で唯一の近代的金融会社がスタート」と言ううたい文句だった。手持ちのお金を全部広告につぎ込んでも山崎は平気だった。月1割3分の高金利で金を集め、月2割1分で短期融資するのである。集めたお金を使って融資するのだから、元手など必要なかったわけである。月1割3分という金利は1年で倍以上になる金利である。東大生が始めた金融会社というのも人気になり、わずか数ヶ月で光クラブは銀座に進出し、社員30人、株主400人という人気金融機関となっていた。しかし、それから数ヶ月後には銀行法違反、物価統制法違反の容疑で逮捕された。(いわゆる出る杭打たれた)状態だ。 つまずき始めである。しかし、山崎がすごかったのはここからである。ありとあらゆる法律を勉強し、取調官と法律論を闘わせ、処分保留を勝ち取り釈放されたのである。すごい男だ。しかし、残念ながらこの騒ぎのせいで本業の方にほころびが起きてしまった。山崎の逮捕後、出資者や債権者のとりたてが殺到した。1割3分で金を集め、2割1分で貸す。元手は無くても、頭脳さえあれば儲けることが出来るという山崎の理論はあっけなく崩れた。出資金の決済期日である11月25日、山崎は青酸カリを飲んで自殺をした。債権者を集めて期限の延長を申し出ることも出来たが、山崎は契約を破ることが一番嫌いだったようである。山崎は、契約は生きている人と生きている人の間で成立するものだから、死者には及ばない。自分が死んでしまえばそれで契約は無効であり、自分は契約違反にはならないという考え方だった。天才であったが、天才ゆえにもろかった。ライブドア事件とダブルものを感じる。最後に山崎氏の辞世の句を・・・「貸借法、全て清算カリ自殺。」貸しも借りも法律も全て青酸カリで清算したというシニカルな句だった。今後ライブドア及びホリエモンの結末が、悲劇にならないことを願うばかりだ。