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毒は恋の媚薬

今のこの時期になると「フグ」が恋しい。が、それには毒がある。にもかかわらず、高級な食べ物として人気がある。私の頼りない記憶ですが、山口と大分で、肝が食べられたと思う。肝をカボスと薬味の入った2盃酢に浸して塊を散らし、これをフグの刺し身ですくって食べる。酒はヒレ酒で・・・あ~!!うまそう。これなら毒に当たってもしかたないと諦める。そんな気がしてきた。毒への恐怖が味を引き立てている。フグの毒はテトロドトキシン(TTX)と言って、フグに付く細菌が作るらしい。卵巣や肝臓に毒がある。特別な調理をすれば肝を食べても毒に当たることはないらしい。分子構造も複雑であるが分っていて、有機合成もされている。では、フグには何のためにTTXがあるのか?外敵から身を守るためだろうと考えられてきたが、別の働きもあることが分かった。Y字の水路を作る。2方から海水を流し、下流にフグを泳がせる。上流の片方に水、もう一方にTTX溶液を垂らす。フグは上流のどちらに行く頻度が高いかを調べる実験だ。結果、メスでは同じ割合であったが、オスはTTXを垂らした方へ行く頻度が多かった。TTXの濃度を上げると頻度を増した。と言うことは、TTXはオスを引き付けるフェロモン(性誘因物質)であった。更に、卵巣内の濃度は排卵周期と関係があり、排卵前は排卵後の2倍の濃度になっていたようだ。フグを食べるものにとっての毒も、当のフグにとっては子孫を残すための情報媒体だ。 毒が異性を引き付ける。あんな男のどこが…と思うが、毒のある態度はフェロモンみたいなものかもしれない。チョイ悪オヤジがモテルのもわからんでもないか?