· 

現況

何かすれば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角この世は住みにくい。住みにくさが高じると安いところに引越したくなる。何処へ越しても住みにくいと悟ったとき、こんな草枕の冒頭が頭に浮かぶ。人間、突き詰めて考えると偉い人になるか、気が狂うかである。自分はどうみても後者である。住みにくい世の中を少しでも、快適に過ごすために音楽・映画・文学などの芸術がある。それらにひたっている時、日常の矛盾・不条理からくるストレスからは解放される。生きているだけで人間は大変なことであり十分である、というのが確か五木寛之だった。一方、自分の美意識に殉じた三島由紀夫や立原正秋は気に入らない人間を「こんな人間でもいきているのか!」とか「人間の弱さを認め、人間は弱いものだと諦めた人間」を嫌った。思想家でも小説家でもない私にはどちらが正しいかわからない。いま考えるのは、自分の健康を守り、家族の無事を祈り、真っ当に職についているだけで十分である。という気持ちだけだ。・・・