昔(昭和以前)は、何かを試そうとすれば先駆者がいないから、その分野で一番になることが、比較的容易だ。その分、国家の運命も経済の発展も、その個人の能力に負う所が大きかった。リスクが大きいようだがまだ「武士道精神」の残っていた日本は、私腹を肥やす人間などほとんどいなく、大きな成功を収めたと思う。その点、現代は戦後の一時代を除いて、個人が何かを始めることは「誰かが既にやっていた」ことをなぞる事から始まる。だから「NO.1にならなくてもいい」と言う言葉が、説得力を持つ。明治時代の人間は「NO.1にならなくては意味がない」が時代の雰囲気だったと思う。あのころのシンプルで自己犠牲を厭わない生き方を、現代で貫くことはたやすくない。