マルクス経済学でも近代経済学でも、資本主義はいずれ活力を失って長期の停滞期に向かうと云われているが、現実は少し違う様だ。それは生産中心の考え方で、消費中心に見ると違った予想が出る。企業は消費者の好みを徹底的に追及することから、資本主義は活力を保っている。商品は機能(効用)よりは物が発する象徴的な意味のほうが重要で、売る側はそれを操作するようになった。その高度な消費社会の中で拡大を続けるのが「消費資本主義」である。効用とは一定の物を消費して得られる満足である。しかし効用が得られるから消費するものではない。そこには欲望があるからである。その欲望は人と物との間に距離があるから生まれる。距離があると物には価値が生まれ、人には欲望が生まれる。欲望はたいていの場合、社会的性格を持ち、他人(ロールモデル)を模倣することで発生するから、その充足は社会的優越と結びついている。物が発する象徴的な意味の大きな一つである。資本主義は、この欲望のフロンティアを拡張する。資本主義と市場経済は分けて考える必要がある。市場経済は、需要と供給がバランスしていて市場の価格調節のメカニズムが働く。一方、積極的に資本投下をして市場の拡大を図ろうとしても、人々の欲望の拡大がないと不可能であり、同時に生産は常に過剰である。今や、低成長ながら好景気が長期に亘っており、何やらバブルを思い出す勢いも一部ではあるが、この辺りから過去を回顧する事も必要だ。