· 

盲導犬

昨日、仕事中に盲導犬と出くわした。彼が仕事中の為あえて声を掛けずに、遠目で見守っていた。一般的に盲導犬と云うと、TVで見たこともあると思うが、その役割を果たした後の末期には、涙した方も多いと思う。普通の犬なら、飼い主に最後を看取って貰う事になるだろうし、その瞬間に立ち会えるかどうかは別にして、一般的には飼い主と一生を添い遂げることになる。
その点、盲導犬は訓練を受け、その中で選りすぐられた犬だけが盲導犬となり、視覚障害者のパートナーとなる。彼らもいつかは、その能力を発揮できなくなった時、パートナーたる主人の元を去り、協会の施設に送られ末期の時を静かに待つことになる。
彼らが盲導犬としての役目を果たせなくなる時とは、病気や体力の衰えもさることながら、認知症でやむなく引退する等、理由は様々だ。彼らが盲導犬としての能力に疑問符が付き、主人の元を去らねばならなくなった日。多分、彼らも悲しいのだろうが、犬を手放すパートナーも身を切られる思いだ。
引退した彼らが暮らす施設には、体が衰え、寝たきり状態のワン達も多い。もしその時、元主人の気配か匂いを察知すると、懸命に起き上がり、主人の元へ駆け寄ろうとする。それもヨロヨロと・・・体は衰えても、愛情と忠誠心は最後の最後まで主人に忠実なのであり、主人と共に歩みたいし、ある意味彼らは命を捧げているのである。歩み寄るのもやっとで、主人のほうが犬に寄って行き、犬を抱きしめる。今度は、主人が犬を抱く番なのである。犬は、自分の体の衰えなど考えず、主人に忠実たることを示そうとする。それが犬に残っていた最後の余力をも奪い去ることになろうとも。
犬と人間との関わりを、これ程までに象徴しているものはないと思う。
彼らの無条件で、主人への愛着の姿を見ると、曇った私の心の闇をも照らしてくれるように思う。